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日本一のぎんなんの生産地、愛知県稲沢市へ。
“翡翠(ひすい)色の宝石”の魅力を、
取材してきました!

産地の食ぢから ぎんなんで腕自慢! 地元ではこんなふうに食べてます

タネづくりで日本の農業を支える。
たまねぎのタネづくり専門農家の奮闘

 

生産量日本一!
ふくよかな稲沢市のぎんなん。

 

地元でのぎんなんの食べ方を教えてもらいました。

 
ぎんなんで腕自慢!

生産量日本一!ふくよかな稲沢市のぎんなん。

愛知県 編

左:稲沢市のぎんなん生産量は年間250トン。若い木には、枝がしなるほど実がつく。
右:イチョウの木。畑のイチョウのほとんどは雌花で、「雄花は、1平方キロメートルに1本あれば十分」という話もあるのだとか。

黄葉の時期の祖父江町。その幻想的な雰囲気には、皆、時を忘れるという。(写真提供:稲沢市役所)

左:りんごのような形の『藤九郎』。殻が薄くて割れやすいが、食べる部分が多く、貯蔵性も高い高級品。
右:ぶどうのような形の『金兵衛』。最も早く出荷される。

稲沢では、田園の隣に植木や苗木が栽培されている風景が広がる。この技術が、ぎんなんの接ぎ木にも一役買っているという。

左:イチョウ畑を案内してくださる南谷功さん。
中:ぎんなんの実はこの機械で皮をむき、殻を水でよく洗い、乾燥させて出荷する。
右:樹齢数十年の古木になると、中まで日が当たらず、枝も実も少なくなる。

「稲沢の祭りのときなどに、出荷しています。おかげさまで、最近は息子や妻とケンカしながらつくるほど忙しいときも(笑)」と言う大橋克己さんと息子の尚毅さん。

上左:小麦粉とぎんなんのペースト、水を合わせて練り、生地の水分の量を手で確認しながら機械で数回のす。
上右・下:のしためんを裁断し、そのまま乾燥させる。生めんと乾めんとがある。

 

■街路樹とはひと味違うイチョウの木

 金色(こんじき)の ちひさき鳥の かたちして 銀杏(いちょう)ちるなり 夕日の岡に
といえば、与謝野晶子の有名な短歌ですが、今回はそのイチョウの実、ぎんなんをご紹介します。
 名古屋から西北に電車で10分ほど行くと、今回の取材地、稲沢に到着します。ぎんなんの主な栽培地は、稲沢市の祖父江(そぶえ)町です。
 取材に訪れたのは7月の半ば。一歩町へ入ると、緑の葉をぎっしりとつけた枝が横へ横へと伸びる、生命力あふれる木々が見られます。でも、晶子の短歌や街路樹のイメージとはだいぶ違うような気が……。もしかして、イチョウの種類が違うのでしょうか?
「いえいえ。皆さんがふだんご覧になっているイチョウは、『実生(みしょう)』といって、自然に成長したものです。でも、わたしたちは、確実に実がなるよう接(つ)ぎ木をするので、光がよく当たるように、枝がどんどん横に広がるんです」
 と教えてくださったのは、ぎんなん農家の南谷功さんです。
「稲沢市は、松などの植木や苗木の日本有数の栽培地でもあり、腕のいい接ぎ木の職人さんが多くいることも、ぎんなんの生産日本一を支えているんですよ」(南谷さん)


■ もともとは屋敷木として植えられていたイチョウ

 祖父江町では、古くから暑さよけや季節風の防風林として、多くの屋敷でイチョウの木を植えていたそうです。ただ、ぎんなんの生産を目的にしたイチョウの栽培は意外に新しく、100年ほど前に、ある集落の数人が名古屋にぎんなんを売りに行ったところ、たいへん高値がつき、それから広まったといわれているのだとか。
「あまりに高値だったので、減反政策の際に、屋敷の木を切って畑に植えるようになり、本格的な生産地として発展したようです。そのころは、道に落ちたぎんなんを、『10円、20円』と言いながら拾ったという話もあります(笑)」
 と南谷さん。道に落ちたものが10円とは、いやはや恐れ入りました。


■ 思いどおりにならない不思議なぎんなん

 高価なだけあって、祖父江のぎんなんは、質も高いそうですが……。
「木曽川の水の堆積物を含んだ肥よくな土壌と、4月の雄花と雌花の受粉の時期に風が適度に吹いて花粉が飛びやすい環境であること、さらに同時期に高温・乾燥が保たれることが大きな要因だと思います。この時期に雨や霧が続くと、受粉が進まず、実ができませんからね」
 と、南谷さん。
「ただ、たくさん実がなればいいというわけでもなくて、今度は1粒が小さくなってしまう。作業的に摘果(てきか)が難しくて、なりすぎも本当に頭が痛いんです。それに、ぎんなんは出荷できるまでに大体10年かかるのですが、その後も、たくさん実がなる年とパタッとならない年があり、人間の思いどおりにはならない、不思議な生き物なんです」
 と笑います。思いどおりにならないからこそ育てがいがある、というところでしょうか。


■ イチョウは黄色、ぎんなんは緑

 そんなぎんなんにも種類があるそうで、南谷さんの畑には3種類の木が植えてありました。
「食べる部分は種ですが、実がりんごのように丸く、種の殻が薄くて色白なのが『藤九郎(とうくろう)』。同じく実が丸くて、少し小ぶり、殻が厚くて赤みがかっているのが『久治(きゅうじ)(寿)』。そして、実がぶどうのようにちょっと長いのが『金兵衛(きんべえ)』」
 実際に1つずつ見せていただきましたが、うーん、わかるような、わからないような……。
 ともあれ、今は緑のこの実たちが、秋には黄色くなって、食卓に上るのですね。
「いいえ、ぎんなんの旬は9月中旬から10月で、緑の実を手で摘んで殻を取った、翡翠色のものが最もよい状態です。黄色いものは、それが貯蔵されたものです」
 ええ、そうなんですか!? 黄色い街路樹と熟したぎんなんのにおいはセットだと思っていましたが……。
「かつては、黄色くなってから木をたたいて落としたものや、自然に落ちたものも高値で出荷できましたが、今は手で摘んだ緑のものでないと、市場価値が低いんです。厳しい時代になりました」


■ 美しい宝石を違う形にも使いたい

 その厳しい時代に、
「粒の小さいものや、地面に落ちたものも利用できないかと考えました」
 と言うのは、祖父江町で製めん業を営む大橋克己さん。10年前からぎんなんめんづくりに取り組んできたそうです。
 小麦粉とぎんなんの、粒子の大きさやめんとして固まるまでの時間が異なるため、失敗の繰り返しだったそうですが、5年前、ついに成功しました。
「めん全体の15パーセントをぎんなんのペーストにすることで、うまくいきました。今は、夏は冷や麦、冬はきしめん、それ以外はうどんとして『ぎんなんめん』をつくっています」(大橋さん)
 早速いただいてみると、モチモチとした独特の食感は、和風のめんつゆはもちろん、ごまだれや冷やし中華にもよさそうです。何よりも美しい色は、「おもてなしめん」としても喜ばれそうです。
 稲沢では、このほかにも、まんじゅうやこんにゃくなど、ぎんなんの可能性が盛んに研究されているのだそう。そんな地元の方々は、いったいどのようにぎんなんを料理しているのでしょうか。

歴史と植木の街 稲沢

 古くから尾張の政治・文化の中心だった稲沢には、今も多くの史跡や文化財、祭りが見られます。
 なかでも、国府宮(こうのみや)神社で旧暦の正月13日に行われる「国府宮はだか祭」は、日本三大奇祭に数えられているそう。神社参道で、数千人の裸の男たちがもみ合う様は、勇壮そのものです。
 また、肥よくな土壌と温和な気候を生かし、しょうが、あしたば、ささげなど野菜も数多くあります。植木・苗木の栽培も盛んで、種類の多さでは日本一を誇ります。
 緑のデパート、稲沢植木センターで選び方や育て方を教えてくれるほか、全国から病気やけがの治癒を祈る人が訪れる矢合(やわせ)観音近くにも、毎月18日の縁日には、植木や苗木が並ぶそうです。

尾張国司が、悪役退散を祈願する厄払いを行ったのが発祥の由来とされる「はだか祭」。
(写真提供:稲沢市役所)

稲沢市マスコットキャラクターのいなッピー。市の名物、あしたば(髪)とはだか祭(ふんどし)がモチーフ。

稲沢のあしたばとしょうがを使っためんも。

矢合観音を訪れる人々も、植木屋さんに思わず足を止めるという。

いんげんのような「ささげ」。

ぎんなんめん、あしたばめん、しょうがめんのお問い合わせ先
●麺や おおはし
〒495-0001 愛知県稲沢市祖父江町祖父江高熊142 TEL:0587-97-0289

 
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